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ゼブラフィッシュ幼生における光依存的な体色変化の定量的解析

(Photochem. Photobiol. Sci., 9(11),1498-1504, 2010)

 動物が周囲の色・模様に合わせて自分自身の体色を変化させる「背地適応」は、体色変化の最も有名な例として古くより知られています。 このような光環境に依存した体色変化は、硬骨魚類などの変温脊椎動物に共通して見られる現象で、捕食者や被食者からの隠蔽、有害な紫外線の遮蔽、 赤外線吸収による体温維持、などに重要な役割を果たすと考えられています。ノーベル賞(生理学・医学賞)学者であるvon Frischはヒメハヤを用いた眼球切除実験から、 硬骨魚類の体色変化を支配する光感受部位が眼球に存在することを見出しました (Pflügers Arch., 138, 319-387, 1911)。しかしながら、 体色変化を制御する光受容細胞や光受容分子に関する知見はこれまでほとんどありません。深田研究室の白木らは、遺伝子工学的手法が可能なゼブラフィッシュ幼生を用いて、 定量的な体色変化の測定系を構築しました(図1)。この測定系を用いることにより、「生きたまま」の個体の体色を「麻酔を使わずに」 固定して観測することが可能になりました。二日齢から五日齢の幼生の光依存的な体色変化を測定したところ、二日齢では光依存的な色素顆粒の拡散が観察され、 一方、三日齢以降では(成魚と同様)光依存的な色素顆粒の凝集が観察されました(図2、図3)。また、五日齢の個体から眼球を切除すると、 色素顆粒の凝集が見られなくなりました。これらのことから、ゼブラフィッシュ幼生が発生途中に体色応答をスイッチすること、また、 他の硬骨魚類と同様にゼブラフィッシュの体色変化を制御する光受容体が眼球に存在することが明らかになりました。今後、 この測定系と遺伝子の機能阻害法や細胞の選択的破壊法を組み合わせることにより、体色変化を制御する光受容機構や神経機構に迫れると考えています。

なお、本論文は掲載誌のthe top ten accessed articlesとなりました(うち原著論文は3本のみ)。